心療内科ってなぁに? 第48回 “お薬なしで治してください”

“お薬なしで治してください”

外来で「お薬なしで治してください」という言葉を聞くと、少し困ってしまいます。中には「お薬は飲みたくない」と強く希望される方もいます。どうしたらよいでしょうか?

初めての薬を飲む時

心療内科の患者さんは、“咳”や“息切れ”といった身体の症状だけでなく“不安”症状を伴っていることが多いです。ストレス関連症状の原因は「脳の異常(機能的な異常)」であるため、精神症状である“不安”症状も伴いやすいためと考えています。特に“初めて”の薬を飲む際に“不安”を強く感じるようです。健康な時でも初めての物や未知なる物を口にする時はためらいますよね。健康を害している時ストレス関連の症状が出ている時に“初めてのこと”を行うと、いつもよりも増して色々な事を頭の中で考えてしまい“不安”が強く出るようです。

“不安”の強い患者さんは、薬を少量より開始するように心がけています。大きな反応がないことを確認した後、少しずつ増やして必要な量まであげていくようにしています。また、できるだけ薬に対する不安が強くならないように、予測できる反応(症状)については事前に伝えて、変わったことがあった場合には連絡してもらうようにしています。

薬で神経の緊張をほぐす

薬は「神経にブレーキをかける」「緊張を緩める」目的で使用しますが、普段から過度に緊張している場合は、初めて飲んだ後に「手足がしびれた」「違和感があります」などの訴えを聞くことがあります。症状について詳しく聞いていくと「以前から同じような症状が出ていました」とも話されます。医療側からの視点では、普段からある症状と同じような症状が出ているという事は、その部位に医療側のアプローチが届いていると感じます。通常、これらの症状は強いものではなく、数日間内服を続けていると小さくなってなくなっていきます。薬で“神経の緊張”をほぐした際に出てくる症状と推察しています。

私たちは、薬に対する体の反応についての知識や経験を持っており、内服後にどのタイミングでどのような反応が出るかは理解していますが、予想外の反応が生じたり、人による違い(個体差)もあるので、薬を始める際は患者さんと色々話しながら、慎重に対応しています。

今回は、薬を飲む際に出てくる“不安”や“症状”についての説明で終わってしまいました。「お薬なしで治してください」という言葉を聞いた場合どうしたらいい?については、次回、一緒に考えてみましょう。

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉